ここのところ冴えないナショナルズにまた一つどちらかと言うとマイナス感のあるニュース。
2009年から今年までナショナルズ傘下だったAAAシラキュース・チーフスに代わって、新たにAAAフレズノ・グリズリーズと選手育成契約(PDC:player development contract)を結ぶことが公表された。
昨年秋にメッツがシラキュースの株を取得した時点で、2018年で満了となるナショナルズとのPDCは更新せず、シラキュースがメッツ傘下に入ることは既定路線だった。問題はナショナルズ傘下のAAAがどこになるかだったが、椅子取りゲームでうまく立ち回れなかった感は否めない。
アメリカの野球の仕組みはなかなか難しい。メジャーリーグとマイナーリーグの関係もその一つ。日本のように一軍、二軍同じ球団が経営しているのではなく、一部の例外を除いて、マイナーリーグも各チームが独立経営となっていてMLBチームがない都市にチームが置かれている。そして、メジャーとマイナーの各チームが専属的に選手育成契約を結ぶ形。AAAはメジャーと同じ30チームになっていて1対1対応。AAAの各チームには、独自採用の選手、提携メジャーチームとマイナー契約をしている選手、提携メジャーチームとメジャー契約をしているが25人枠に入れない選手(故障中の選手も含む)が混在することになる。
ここでややこしいのは、それぞれが独立した球団なので契約ベースの関係になっており、期間が満了したら乗り換えがあること。しかし、AAAは30球団とMLBと同じ数で、リーグを組んでいるから、簡単に球団を廃止したり新設したりするわけにはいかない。球団の本拠地が移転することはもちろんあり得るが、日本以上に各都市の地元チームに対する愛着は強いし、球場等の整備に地元自治体が財政資金を投入している場合もあるので簡単には移転できない。
元々提携関係はグルグルと変わるものではなく、また、2018年に満了となるチームもそれほどなかった。ややこしくなるが、丸数字の2つの動きが玉突きのキッカケとなった。
①メッツが近既定路線で近所に移って空いたラスベガスにこれも近所のアスレチックスが移る。
②アストロズが遠方のフレズノから近くのラウンド・ロックへ移る。
①メッツ ラスベガス→シラキュース
オークランド・アスレチックス ナッシュビル→ラスベガス
②ヒューストン・アストロズ フレズノ→ラウンド・ロック(TX)
この時点で、シラキュースと提携していたナショナルズとナッシュビルと提携していたテキサス・レンジャーズの2チームが弾き出されたことになり、2チームでナッシュビルとフレズノを分け合う形になった。
どちらのチームにとっても、ナッシュビルの方が近いので都合が良い。必然的にナッシュビル争奪戦になった。ナショナルズはオーナーが最近現地入りしたとの噂もあったが、予想通りナッシュビルと提携することはできなかった。
なぜ近い方が良いかと言えば、メジャー契約選手の入れ替えをする際に移動時間が短いため。ハブ空港が近くにない上に東海岸とは3時間も時差があるフレズノでは、当日に呼び寄せることは不可能。また、近所であれば選手の調整状態を確認することも容易だし、球団のマーケティングの上でも戦略は広がる。また、フレズノは球場は比較的整備されているものの、夏は非常に暑いそうだ。
MLBとAAAの地域バランスが合致していないのが根本の問題のようだが、シラキュースとの契約が更新できないことは去年から分かっていたのだから、ナショナルズ経営陣にとっては失態とも言うべき事態で、ファンの声は当然厳しい。批判だらけのナショナルズツイッターへのリプで笑えたのは、「これは選手にマイナー行きは避けたいと思わせて頑張らせるための高度な作戦だろう」という皮肉だった。
オークランドとフレズノは3時間の距離、もちろんラスベガスも十分近いのでアスレチックスにとってはどちらでも構わないだろうが、フレズノは遠すぎる。フレズノとの契約は2年契約で2020年に備えているとも見えるし、椅子取りゲームでしくじった感じは否めない。
そうは言っても、フレズノ・グリズリーズはナショナルズとの契約を歓迎しているし、フレズノのファンも概して好意的に受け止めてくれているようだ。この機会に気分を変えて、ナショナルズとグリズリーズが共に来年は快進撃するよう応援していきたい。
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